川崎医療短期大学 創立50周年記念誌
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16 学科創設の思い出といえば、「温故知新」という言葉が思い浮かびます。「温故知新」は川崎医療短期大学が発足したときの臨床検査科主任教授の佐々木匡秀先生がよく用いられた言葉でした。発足当時は様々な問題が次々に起きていましたが、それを乗り越えるために先人の知恵を学ばれていたものと思います。また、そのためか他校にはないシステムを構築されていました。その一例が、学生に川崎医科大学附属病院でのアルバイトを推奨されたことです。病院側にも受け入れの体制を整備していただき、臨床現場を体験する貴重な時間とするとともに、学生の経済的支援をするといったものでした。そのシステム実現のために、当時の附属病院の関係者との話し合い、医療短期大学事務スタッフとの相談、学生たちへの指導といった諸々を、その責任者として調整に臨んでおられました。また、臨床実習とも連携することで、実習の質の向上にも資するものとなりました。しばらくすると、構築した体制は状況に応じて変わっていきましたが、その後も学生にとって有益な体制がとれるよう、病院スタッフ、医療短期大学教員が努力を重ねていきました。その結果、国内に誇れる現在の病院実習の体制が整いました。特色ある臨床実習が一朝一夕にでき上がったわけではありません。学生や実習担当者をはじめとした関係者の皆様には先人の努力に思いを馳せていただきたいと思っています。そして、発足当時から現在まで一貫して言える特長は、学生、検査部技師、教員といった関係するすべての方々の距離の近さだと思います。これは佐々木先生の良き理解者であった医療短期大学の当時の学長の川上亀義先生も常に身をもって実践しておられました。たとえば、川上先生は野菊賞という賞をつくられ、事務職員、用務員をはじめ、全教職員を対象に、日頃から小さな善意を積み重ねておられる方々を表彰されていました。要は学生と教員だけでなく、医療短期大学全職員の距離の近さを大切にして、和の心を重んじた教育体制を構築していった時期であったと考えています。 現在は、本学科が川崎医療福祉大学へ改組移行するなど、大きく変化をとげていますが、教育にそそぐ情熱や心構えは発足当時と同じであることが大切であると考えており、現在もその精神は受け継がれていると感じます。初心を大切にし、折に触れ、医療短期大学発足当時に思いを馳せていただければ幸いです。元臨床検査科教授佐藤 彰一臨床検査科創設の思い出

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