川崎医療短期大学 創立50周年記念誌
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19 川崎医療短期大学栄養科は、1983(昭和58)年4月に開設されました。私は川崎医科大学の小児科学教授でしたが、乳児栄養の研究が専門であった関係上、栄養科の創設に深く関わりました。 創設にあたり、当時の川﨑祐宣理事長は「病院実習の時間を多くして卒業後すぐに役立つ栄養士を育ててほしい」と言われ、修業年限を3年とされました。 カリキュラムの作成には大変苦労しました。中でも3年間のうち1年間かけて川崎医科大学附属病院などで行う学外実習を配置するための準備が大変でした。全国で初めての臨床に強い栄養士養成課程ですから、手本はどこにもありません。苦労の結果、40週間にわたる学外実習計画ができ上がり、学科の名称を臨床栄養科として当時の文部省と厚生省に設置関係の申請書類を提出しました。 文部省の書類審査は無事に通過できましたが、厚生省では設置の意義は認めていただいたものの、臨床栄養科の名称に許可がおりませんでした。臨床栄養士の教育は、教育課程を3年に増やしても短期大学では認められず、大学の4年課程はおろか、6年課程が必要であるというのです。本学の教育課程では臨床栄養の実務担当者の養成が目的であり、研究者を育成する課程ではないと反論しても駄目でした。そうした経緯で臨床栄養科は認められないまま協議を重ねる中で、徳島大学医学部には4年課程の栄養学科があるので、栄養科の名称なら認めても良いとの話に至りました。厚生省の審査をパスしないと、学科はできても学生は卒業後に栄養士の免許が取得できないため、学科の名称は栄養科にすることとし、名を捨てて実を取ることにしました。 ようやく折衝が大詰めを迎えた矢先、主任教授の内諾を得ていた方の突然の辞退がありましたが、私が主任を兼ねることでその場は何とか乗り越え、1983(昭和58)年1月17日、開設の認可がおりました。この時の喜びは今でも忘れられません。 本学の栄養科は、臨床に強い栄養士養成課程として他の大学で類のないユニークなカリキュラムで編成されていたために、講義や実習は実にハードでしたが、学生たちは皆頑張って実力を身に付けて巣立っていきました。就職率は常に100%を維持し、83~98%が栄養士としての就職でした。管理栄養士国家試験も短期大学として常に全国上位に位置する輝かしい合格率を残しました。 全国的に注目された栄養科でしたが、1991(平成3)年4月、川崎医療福祉大学の開学を機に、4年課程の臨床栄養学科として新たな歩みを始めました。3年課程の栄養科としては11年という短い歴史でしたが、大きな成果とたくさんの思い出を残してくれました。私にとっては深く心に刻まれた思い出深い学科です。栄養科初代主任守田 哲朗栄養科創設の思い出

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