川崎医療短期大学 創立50周年記念誌
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21 医学とデザインを融合させた、我が国初の「医用デザイン科」が誕生したのは1994(平成6)年4月1日です。「機能重視から人間重視へ」を基本理念に、医学的基礎知識とデザイン感覚と技術を身につけ、医療福祉施設や社会で活躍できるデザイナー養成を目指してスタートしました。 前例のない全く新しい学科だったことから、開設に向けて平島二郎初代主任教授は、岡田政敏学長や事務担当者と新幹線に乗って何度も文部省に説明に行ったと話しておられました。医学系には福屋崇教授など川崎医科大学から、デザイン・造形系には平島二郎教授の他に岡山大学や香川大学、さらに県内の短期大学や高等学校の美術系、デザイン系から教員が加わる多彩な陣容でした。 私は3月下旬、赴任前の挨拶と打合せのため川崎医療短期大学を訪ねました。最後に案内されたデザイン棟は本館から離れて新築され、渡り廊下で繋がり、3階建ての円筒形のモダンな実習棟でした。ところが中に入って驚きました。実習室の中は梱包された真新しい机や椅子、実習機材や道具が所狭しと置かれたままでした。設置認可が決まり、慌ただしく準備が始まった様子が伺えました。 4月に着任してすぐに新入生を迎える準備に取りかかりましたが、主に使用する実習室の机と椅子の梱包を解き、並べるのが精一杯でした。他の実習室の準備や実習機材の移動、設置は間に合わず、授業を進めながら重い物は男子学生たちに協力してもらい整備したのを思い出します。 そんな中で、4月末には医療短期大学恒例の新入生合宿研修が予定されていました。急遽、研修内容の計画や宿泊場所、バスの確保を1週間あまりで行い、なんとか真庭郡新庄村の宿泊施設を確保できました。新庄村歴史民俗資料館の見学や蒜山にある朝鍋鷲ヶ山へのミニ登山、その頂上でスケッチ実習等を行いました。宿泊施設での夕食後の交流会は今では考えられないほど自由で、活発な交流が生まれ、一気に親睦を図ることができました。 その後の授業はもちろんのこと、病院での初めての実習や就職指導も大変でした。特に医療福祉関連施設では、受入側でもデザイン科の卒業生がすぐに働ける部署や職種がなかったため、病院長や施設長にデザイン力により施設内の様々なコミュニケーションの改善をする職種の必要性などを説明し、理解を深め、就職に結びつくよう施設や企業の訪問を行いました。1期生である学生たちも、いわゆる就職氷河期の真っ只中での就職活動は大変だったと思います。 私は1期生の担任をしていましたので、いろいろな思い出が鮮明に残っています。すべて一からのスタートで苦労はありましたが、面白く、楽しい経験であり、私にとってはその後の教員生活をなんとか全うできる貴重な財産となりました。学生たちや諸先生方、事務方の皆さんに感謝しています。元医用デザイン科助教授徳山 容医用デザイン科創設の思い出

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