平成25年度第三者評価機関別評価結果

平成25年度第三者評価機関別評価結果(全文)

機関別評価結果

川崎医療短期大学は、本協会が定める短期大学評価基準を満たしていることから、平成26年3月13日付で適格と認める。


機関別評価結果の事由

1.総評

 平成24年6月14日付で当該短期大学からの申請を受け、本協会は第三者評価を行ったところであるが、評価の結果、当該短期大学は、自らの掲げる教育理念の実現及び教育目標の達成に向けて順調に進捗しており、本協会が定める短期大学評価基準を満たしていると判断した。
 上記の判断に至った事由は、おおよそ次のとおりである。
 昭和48年に開学されて以来、これまでに約1万3500人を超える卒業生を全国に送り出してきた実績がある。建学の理念は機会あるごとに学内外に表明し、当該短期大学を構成する5学科において共有され、各々の教育目的・目標に生かされている。教育の向上・充実のため、クオーター制(一部の科目)、e-learning、e-ポートフォリオ、単位保留制度(成績が合格点に達しなかったが、追加的指導によって十分に合格に達すると判断できる学生に対する特別措置)等を導入し、PDCAサイクルも活用している。各種委員会を中心に、ほぼ全教職員が関与して日常的に自己点検・評価を行い2年ごとに報告書を作成している。
 各学科の学位授与の方針は各々の学習成果に対応しており、卒業の要件、成績評価の基準、資格取得の要件を明確に示している。各学科の教育課程は学位授与の方針と対応しており、学習成果に対応した授業科目を意識し、シラバスに必要な項目を明示するなど、体系的に編成され、見直しも定期的に行っている。建学の理念や教育目的・目標にのっとった各学科の学習成果は、一定期間内で獲得可能なものであり、単位取得や卒業時共通試験、最終的には資格試験という目に見える形で測定・分析されている。卒業後評価を知るため、就職先にアンケートを送って調査している。学習成果獲得のための学生支援として、教員は毎年実施する学生による授業評価の結果を認識している。アドバイザー制、オフィス・アワーを設定し、履修及び卒業に至る学生指導を行っている。事務職員もSD活動を通じて教員と同じ意識で学生支援を行っている。図書館、学内LANやコンピュータ等の教育資源は充実している。学習方法についての説明会やガイダンスの実施、学力不足の学生に対する補習、アドバイザーや担任としての適切な指導・助言等の学習支援を行っている。学生の生活支援として食堂、売店、学生寮、駐輪場等を整備している。社会人学生への支援、留学生には費用の全額を学園が負担するなどの支援を実施している。学生の社会的活動に対しては、表彰するなどして積極的に推進している。「就職専門委員会」を中心として学科ごとに進路支援体制を備えている。入学者受け入れの方針を明確に公開し、入学手続者には「入学前学習資料集」を配布、入学後は補習の必要性の尺度としてプレースメントテストを実施している。
 人的資源として、専任教員は真正な学位、教育実績、研究業績等、短期大学設置基準の規定を満たしている。専任事務職員は事務分掌規程にのっとり専門的な職務に就いておりSD活動も活発である。「防災マニュアル」が整備され、「個人情報保護管理委員会」が設置されている。学内の人事管理は適切に行われており、教職員の就業諸規程は整備し周知されている。広大な校地、運動場、体育館、校舎面積を有しており、短期大学設置基準の規定を満たしている。授業用の機器・備品も十分で、図書館には多くの蔵書、学術雑誌等が整備されている。学内LANは平成24年度に更新され、学生寮内でも使用可能である。財政は健全に管理・運営されており、貸借対照表や退職給与引当金等にも問題はない。学生定員管理が十分とはいえない学科があるものの、短期大学全体では経営実態、財政状況に基づいた経営計画を立てている。
 理事長、学長は規程に従って選任され、建学の精神や教育目的・目標を理解し、リーダーシップを発揮して、各々が学園の発展及び短期大学の充実に向けて努力している。理事長は理事会を適切に開催・運営し、学長は教授会を審議機関として適切に運営している。監事は適切に任務を遂行し、評議員会は理事長の諮問機関として機能している。学校法人及び短期大学は中・長期計画に基づいた毎年度の事業計画と予算を決定し、速やかに関係部署に指示している。計算書類、財産目録等は、経営状況及び財政状態を適正に表示し、資産及び資金の管理と運用は資産等の管理台帳、資金出納簿等に記録し保管されている。なお、建学の精神をはじめ、三つの方針、自己点検・評価報告書、各種の学習成果及び経営状態等をウェブサイトや冊子等で学内外に広く公開している。

2.三つの意見

(1)特に優れた試みと評価できる事項

基準Ⅰ 建学の精神と教育の効果
  • [テーマA 建学の精神]
  • 建学の精神や教育理念について、学生や教職員に対して機会あるごとに学長自らが説明し、広く周知に努めている。
  • [テーマB 教育の効果]
  • 医療保育科では、公務員保育職正規採用試験の合格が毎年卒業生の約30パーセントとかなり高くなっている。
  • [テーマC 自己点検・評価]
  • 「川崎医療短期大学点検評価委員会規程」にのっとり、「点検評価委員会」が常設され、さらに、「自己点検・評価等専門委員会」と「第三者評価専門委員会」を置くなど、きめ細かに検討されている。また、西九州大学短期大学部との「相互評価報告書」を作成し、客観的な評価を求めている。
基準Ⅱ 教育課程と学生支援
  • [テーマA 教育課程]
  • 平成22年度文部科学省「大学教育推進プログラム」に選定された「学士力向上のための統合的教育戦略」プロジェクトを実施し、同省の事業終了後も継続して改善を図っている。
  • [テーマB 学生支援]
  • e-learningやe-ポートフォリオがインタラクティブに活用されているほか、「アドバイザー・担任のための学生支援マニュアル」が作成され、アドバイザー制や担任制を通して、入学から卒業まで実習や資格取得、就職等でも教員が学生と良く関わり支援している。なお、e-ポートフォリオについては、保護者まで拡大して運用されている。
基準Ⅲ 教育資源と財的資源
  • [テーマA 人的資源]
  • 事務組織は、庶務課と教務課の2部門の簡素化された組織体制となっており、専任教員数に比してかなりの少人数であるにもかかわらず、着実に所掌業務が遂行されている。
基準Ⅳ リーダーシップとガバナンス
  • [テーマB 学長のリーダーシップ]
  • 「学士力向上のための統合的教育戦略」に学長が中心になって取り組んでおり、異なる専門性を有する5学科を一つの短期大学の組織として運営・統括している。

(2)向上・充実のための課題

基準Ⅰ 建学の精神と教育の効果
  • [テーマB 教育の効果]
  • 医療介護福祉科において、受験者数が少ないままで推移しているので、「医療介護福祉」の意義の見直しや「医療介護福祉に関する深い専門的知識と技術」の向上等、教育の質保証の立場から検討されることが望ましい。
基準Ⅱ 教育課程と学生支援
  • [テーマB 学生支援]
  • 学生による授業評価は学内に公表されているものの、目的である授業改善が具体的にいかに図られているかが不明であり今後の課題である。
基準Ⅲ 教育資源と財的資源
  • [テーマB 物的資源]
  • 校舎棟の大部分が築40年を経過していることから、老朽化対策及び耐震対策に取り組むことが望まれる。

(3)早急に改善を要すると判断される事項

 なし

3.基準別評価結果
基 準 評価結果
基準Ⅰ 建学の精神と教育の効果
基準Ⅱ 教育課程と学生支援
基準Ⅲ 教育資源と財的資源
基準Ⅳ リーダーシップとガバナンス
各基準の評価
基準Ⅰ 建学の精神と教育の効果

 昭和48年に全国に先んじて発足された総合医療系の短期大学であり、40年という輝かしい伝統を誇っている。「人をつくる、体をつくる、深い専門的知識・技能を身につける」という三つの建学の精神が掲げられ、5学科の教育の基幹となっており、入学式、卒業式や各種の学内行事(戴帽・授章式、実習開始式、ワッペン授与・授章式)等あらゆる機会をとらえて学生に周知している。建学の精神は教育目的・目標に生かされており、これらに基づいて三つの方針(入学者受け入れの方針、教育課程編成・実施の方針、学位授与の方針)が5学科それぞれに設定されている。建学の精神は学生の講義だけでなく、新任教員へのオリエンテーションでも分かりやすく説明することで学内周知が図られ、さらにウェブサイトや種々の印刷物等によって学内外に広く公開されている。
 5学科の専門性が異なるため、教育目的・目標の点検や見直しが容易でないことを実感・把握し、その難点を克服するための種々の努力がうかがえる。
 建学の精神に基づいた教育目的・目標は、学習成果と明瞭にリンクしており、小テスト、学期の定期試験、国家試験や公務員保育職採用試験結果等で測定された学習成果とともに広く学内外に公表され、結果の分析や定期的点検も行われている。
 教育の質保証のためには、学校教育法、短期大学設置基準や各学科関連の規則・基準等の法令を順守し、変更に際しては速やかな対応がなされている。教育の質向上に向け、FD・SD委員会主催の教育方法の改善に関する勉強会、意見交換会、学生による授業評価の実施やオフィス・アワーの設定等も導入している。さらにはクオーター制(一部の科目)、e-learning、e-ポートフォリオ、単位保留制度等も導入し、教育の質向上を図っている。学習成果の分析の結果で、一部の学科で休学や退学者が相当数みられ、また、定員充足率が低いまま推移している学科もあるが、それを深く認識し改善に向けて努力しようとする姿勢がうかがえる。
 「川崎医療短期大学点検評価委員会規程」に基づいて、「点検評価委員会」が常置されている。同委員会には「自己点検・評価等専門委員会」の他に「第三者評価専門委員会」が設置され、2年ごとに報告書が作成され公表されている。報告書作成への関わり方の軽重の差や貢献度に差はあるものの、ほぼ全教職員が関与し、完成した報告書は全員に配布し内容を共有している。自己点検・評価の活用の表れとして他短期大学との相互評価が実際に行われている。

基準Ⅱ 教育課程と学生支援

 建学の精神に基づき各学科の教育目的・目標が定められ、これに基づいて全学科の三つの方針(入学者受け入れの方針、教育課程編成・実施の方針、学位授与の方針)が策定されている。ウェブサイト、オープンキャンパス、オリエンテーション等で学内外に周知されている。平成24年度からカリキュラムマップを作成し、学習成果とのつながりをより明らかにしている。
 学習成果においては、国家試験、卒業時共通試験等により評価され、その結果も全国平均を超える成績となって、学習成果が保証されている。医療介護福祉科においては、いろいろ検討され、新しく短期大学士(医療介護福祉)の学位が授与されることになったが、「医療に強い介護福祉士」の能力を明確にすることが望まれる。卒業生のユニバーサル化を図るため、平成22年度文部科学省「大学教育推進プログラム」に選定された「学士力向上のための統合的教育戦略」プロジェクトの推進や、入学試験における学力試験の配点比重の検討もされている。
 なお、現存する留学生受け入れ制度を他の学生の「学び」につなげる工夫をして国際化を図ることが望まれる。
 学生支援としては、教員は学生による授業評価を定期的に受け、FD・SD委員会が開催するFD研修会に参加し、授業や教育方法の改善を図るなどして、学習成果獲得に努力している。今後、より具体的に授業改善につなげていくことが望まれる。また、学内LANやe-learningが導入され、授業等に活用されている。複数の学科では、入学前教育・接続教育を通して、早期からの学習への動機付け等に役立て、国家試験対策として成績不振学生を対象に小グループによる補習授業等も展開している。学生生活全般における支援・指導のための「学生部」を置き、「学生生活委員会」と担任、アドバイザーが中心になり組織的に学生を支援している。就職専門委員と事務部庶務課からなる「就職専門委員会」があり、全学的に就職支援を行っている。「大学案内」と「募集要項」では、各学科の三つの方針が平易に説明され、入学者受け入れの方針を明確にしている。ウェブサイトにもこれらの情報が明示されている。ただし、医療介護福祉科や医療保育科では、広報活動にもかかわらず社会に幅広い理解が得られていない可能性があり、これが課題とされる。

基準Ⅲ 教育資源と財的資源

 専任教員数は短期大学設置基準の規定を充足している。教員配置は適正で専任教員の半数以上が修士以上の学位保有者であり、十分な専門教育を行える体制である。非常勤教員は約7割を学園系列から任用しており、教育効果と学園の総括人事が意図されている。教員選考規程等により採用・昇任の審査を行い教授会で適正に決定されている。
 専任教員に対し研究活動に専念することを求め多数の論文、学会発表の成果がある。研究紀要は紀要編集委員会規程、紀要投稿規程等を整備し作成されている。科学研究費補助金、外部研究費等は平成24年度実績で3人が獲得しているが、全専任教員への波及が課題とされている。
 専任教員には研究室を整備し、自由に研究時間を取ることを認めている。
 FD・SD活動はFD・SD委員会規程に基づき積極的に実施されている。
 事務組織は事務部長の統括の下、庶務課と教務課の2部門の簡素化された組織体制となっており、専任職員が所管業務の遂行に当たっている。事務部門の規程は事務分掌規程をはじめもれなく整備され、規定に基づき各業務が機能している。職員の増員が課題とされている。
 就業に関する規程集を整備し、IDカード(職員証)を用いた出勤管理を行うなど、就業は適正に管理されている。
 校地・校舎の面積及び学科設置上必要な施設内容は、短期大学設置基準に準拠している。図書館は約9万冊の図書、約230種の学術雑誌等を備えている。老朽化した校舎は大規模改善の必要性が認識されている。固定資産管理規程、財務関連規程は整備されている。消耗品、貯蔵品管理のための規程の整備が課題とされている。「防災マニュアル」は火災対策、地震対策に対応している。全学構成員による防災の点検と訓練が課題とされている。
 パソコンを用いた教育は、e-ポートフォリオやe-learningを活用するなど、充実している。講義室、実習室にはパソコン連動の周辺機器が整備されている。保護者まで対象としたe-ポートフォリオを構築し学生情報を提供している。機器入れ替えやソフトウエアの整備等が課題とされている。
 学校法人で平成23年度及び平成24年度、短期大学部門で過去3か年、帰属収支が収入超過である。貸借対照表の状況は健全に推移している。資産運用規程により適切に資産が運用されている。短期大学全体として収容定員充足率に相応した財務体質を維持している。

基準Ⅳ リーダーシップとガバナンス

 理事長は建学の精神及び教育理念・目的を十分に理解し、理事及び評議員として学校法人に深く関わり、学校法人が設置する6機関の運営管理にリーダーシップを発揮している。理事長、理事、監事の職務権限と責任の範囲は明瞭に示されている。理事会は最終意思決定機関であり、寄附行為に基づいて適切に開催されその役割を十分に果たしている。理事会は学校法人の建学の精神を理解し、健全経営についての優れた学識や見識を有する理事で、また、評議員会は理事の定数の2倍を超える人数となっており、私立学校法の規定にのっとった適切な人数で構成されている。理事会は当該短期大学発展のために学内外の必要情報を収集し、第三者評価結果に対する責任や短期大学の運営に対する法的な責任のあることを認識している。監事は適切に監査業務を行っており、監査報告書を評議員会、理事会に提出し、説明している。理事長は毎会計年度終了後、適切な時期に監事の監査を受けた後、理事会の議決を経て財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書を評議員会に諮っている。当該学校法人は私立学校法にのっとり、事業報告、資金収支計算書等の財務状況をウェブサイト等で公表している。
 「施設長選任規程」により選出された学長は、高潔な人格と優れた学識を有し、リーダーシップを発揮して建学の精神に基づく教育研究を推進し、当該短期大学の運営管理を統括している。教授会は三つの方針や学習成果としての国家試験合格率等に深く関心を持ち、改善を検討しており議事録も整備されている。教授会の他には数々の委員会があり、設置規程等に基づいて適切に運営されている。
 評議員会は私立学校法第42条にのっとり、理事長の諮問機関としての役割を果たしている。当該短期大学及び法人は中・長期計画に基づいた事業計画と予算を適切な時期に決定し、速やかに関係部署に指示して予算を適正に執行している。計算書類、財産目録等は当該学校法人の経営状況及び財政状態を適正に表示している。資産及び資金の管理と運用は、公認会計士の監査意見を尊重しつつ、資産等の管理台帳、資金出納簿等に適切な会計処理に基づいて記録し、安全かつ適切に管理している。また、学校教育法施行規則、私立学校法の規定に基づいて、教育情報や財務情報をウェブサイト等で公開している。


なお、本学では指摘のあった「向上・充実のための課題」については、直ちにその改善に取り組んでいます。


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